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類・類型制度

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類・類型制度(るい・るいけいせいど)1985年(1985年度)から2014年(2013年度末)まで実施されていた京都府公立高等学校の全日制普通科における教育制度である。普通科を類と類型に別け、選抜した。

類と類型

類・類型制度は、普通科をと呼ばれる教育目的・目標ごとに、またその類を系統ごとに分けた類型の2つからなっている。

第Ⅰ類(標準・学力充実)
普通科目の履修について全体的にバランスをとり、基礎的、基本的事項を重視して、学力の充実を図る類型です。(2年から類型別の学習)
文 系――国語・社会などを多く学習する類型
理 系――数学・理科などを多く学習する類型
一般系――普通科目のほかに職業科目なども学習できる類型

第Ⅱ類(発展・学力伸長)

普通科目の履修を中心として学習内容を拡充、高度化し、学力の伸長を図る類型です。(1年から類型別の学習)
人 文 系――国語・社会などを多く学習する類型
理 数 系――数学・理科などを多く学習する類型
文 理 系――国語・社会・数学・理科などの学習を平均して多くする類型
外国語系――特に外国語を多く学習する類型

第Ⅲ類(個性伸長)

普通科目の履修を通じて学力の充実を図ることを重視するとともに、特定の教科・科目の履修により、個性の伸長を図る類型です。(1年から類型別の学習)
体 育 系――体育の学習を多くする類型
芸 術 系――美術や工芸などの学習を多くする類型
生活教養系――商業や家庭などの実務的な学習を多くする類型

(出典:京都府教育委員会『昭和60年度からの京都府公立高校の新しい教育制度』p.5より作成)

『月刊高校教育』(1985・7)によると、第Ⅰ類、第Ⅱ類、第Ⅲ類の生徒構成比率(定員割合)は7:2:1であり、全ての学校に一律に類・類型を設置したのではなく、例えば第Ⅲ類が設置してある高校は85年当時あった49校中わずか9校である。

また、同じく『月刊高校教育』によると「類・類型を学科に準じて『学科設置規則』(あるいは『学則』)に位置づけ、入学時点から類・類型別(ただし、第Ⅰ類は一括)に志望することを求めている。」とあり、類・類型は非職業系の専門学科がない時代の非職業系「専門学科」に準じる位置づけがなされていた。

通学圏

2008年度の時点で、京都府には8つの通学圏と呼ばれる学区が設置されていた。

表1 通学圏と対象地域
通学圏名 市町村名
丹後 宮津、京丹後、伊根、与謝野
中丹 綾部、福知山、舞鶴
口丹 京都市のうち周山中学校区に限る、亀岡、南丹、京丹波
京都市北 北区、上京区、右京区、下京区(松原中学校区に限る)
京都市東 左京区、山科区、伏見区(醍醐に限る)
京都市南 東山区、下京区(松原中学校区を除く)、南区、伏見区(醍醐を除く)、八幡市(八幡長町、八幡樋ノ口、川口高原 に限る)、久御山市(大橋辺 に限る)
京都市西 西京区、向日市、長岡京市、大山崎町
山城 宇治、城陽、八幡(八幡長町、八幡樋ノ口、川口高原を除く)、京田辺、木津川、久御山(大橋辺を除く)、井出、宇治田原、笠置、和束、精華、南山城

2009年度からは、京都市・乙訓地域の4つの通学圏が新しい南北2つの通学圏に改編され、以下の表ようになった。

表2 通学圏と対象地域(2009年度以降)
通学圏名 市町村名
丹後 宮津、京丹後、伊根、与謝野
中丹 綾部、福知山、舞鶴
口丹 京都市のうち周山中学校区に限る、亀岡、南丹、京丹波
京都市北 北区、上京区、右京区、下京区(松原中学校区に限る)、左京区、西京区
京都市南 東山区、下京区(松原中学校区を除く)、南区、伏見区(醍醐を除く)、山科区、八幡市(八幡長町、八幡樋ノ口、川口高原 に限る)、久御山市(大橋辺 に限る) 、向日市、長岡京市、大山崎町
山城 宇治、城陽、八幡(八幡長町、八幡樋ノ口、川口高原を除く)、京田辺、木津川、久御山(大橋辺を除く)、井出、宇治田原、笠置、和束、精華、南山城

(出典:京都府教育委員会ら『公立高校普通科の選択肢が広がります。』より作成)

選抜制度

注記がない限り2008年度入試のものを記す。

選抜方法

主に推薦入学、特色選抜、一般選抜の3つからなる。推薦・特色の後、一般選抜が行われ、一般選抜を経ても定員に空きがある場合、第2次募集が行われる。

推薦入学

 普通科第Ⅱ類英語系、普通科第Ⅲ類、専門学科、総合学科、普通科総合選択制、普通科単位制を対象とし、概ね定員の50-70% 程度を募集した。非職業系専門学科(その他専門学科)、普通科第Ⅲ類、英語科、美術工芸科、音楽科および、システム工学科(キャリア実践コース) には適性検査を必要とし、適性検査に合格することで受験資格を得る。

特色選抜

 山城、口丹、中丹、丹後の各通学圏の普通科のⅠ類とⅡ類(英語系除く)を対象とし、定員の最大10%を募集した。山城通学圏(南陽除く)においては、全ての類・類型を「普通科」として一括して選抜する。

一般選抜

京都市・乙訓の4通学圏、口丹以北の3通学圏、山城通学圏で選抜方法が違うため、分けて記す。

京都市・乙訓

京都市・乙訓の4通学圏では、第2志望(同一高校の他類型含む。 )まで記入出来る。Ⅰ類は総合選抜制を取っているため、Ⅰ類において志望先が特にない旨を示した場合、合格に達した際には入学願書に記した最寄りの駅・バス停 により通う高校が決定される。また、Ⅰ類定員の最大20%まで特別活動及び部活動に関連する入学希望により、京都市・乙訓の各通学圏相互間において越境入学が可能である。

北丹・中丹・口丹

口丹以北の3通学圏では、第2志望まで記入できる。ただし、京都市・乙訓の通学圏とは違い単独選抜であるので第2志望がある場合には高校名と類・類型を記す必要がある。

山城

山城通学圏においては、普通科 は第1、第2志望のいずれかのみ だが、第1に普通科を志望する場合、3校まで順位をつけることができる。第3順位校まで記し、第3順位の希望までの合格者で定員を充たしていない高等学校を希望した場合、第3順位までに合格していなかったとしても、山城圏内の普通科において定員に空きがある際には、定員に空きのある高校に合格することがある。

類・類型制度の前史と導入

類・類型制度が導入される1985年度以前の京都府公立高等学校教育制度は、1950年から1978年まで続いた蜷川虎三 府政での教育行政では「十五の春を泣かせるな(十五の春は泣かせない) 」というスローガンの下、「小学区制、総合制、男女共学」いわゆる「高校三原則」を遵守したものとなっていた。

特徴としては、京都市(乙訓含む)地区、山城第一地区、山城第二地区、亀岡地区の4地区では、普通科は受験者を府立高校の定員でまず一括して選抜し、選抜された受験者の住所(最寄りのバス停や駅)によって通う高校が決まるという総合選抜制が取られた。それ以外の地区においても、1学区ごとに1校(小学区制)のみ設置してあるため小学区単独選抜が行われていた。

これは普通科以外の職業科でも行われ、商業科においては学区内で複数ある(京都市など)ところでは総合選抜、1校しかないところでは小学区単独選抜と、小学区制が固持されてきた。

しかし、蜷川が知事職から退いた78年の知事選で革新系候補者が保守系候補者に破れ、保守系知事による教育行政が開始されると、教育長の交代、また教育制度について府民の声を聞くための懇親会を設置するなど「三原則」遵守の方針は次第に後退し始める。

保守系知事が2選を果たすと、その流れは加速し、83年1月に高等学校教育懇親会が報告書『まとめ』を提出、同年3月には府教育委員会が「京都府高等学校教育制度改善の基本」を決定・公表し、それを具体化させるための審議会を設置する。同年12月には審議会が答申し、「三原則」の見直しと教育制度の改革が決定付けられた。その答申を基に84年3月に府教育委員会から『京都府公立高等学校教育制度の改善について』が出され、その指針を根拠として『昭和60年度京都府公立高等学校入学者選抜要項』を発表し、85年度から開始される教育制度(類・類型制度)に基づく選抜試験が行われた。

一連の見直しの背景にあるものとしては、教育受ける機会均等のための「三原則」ではあるが、高校進学が準義務教育的になったと同時に大学進学熱が高まり、小学校・中学校に続く普通教育としての高校教育よりも大学進学(受験)のための高校教育が要請されているにも関わらず、それに対応してこなかったことにより難関大学の合格者が公立よりも私立の進学校が多く、公立からは難関大学に行きにくい状況が生まれてしまったこと、また答申にあるように、生徒個々人が「能力・適正、進路や、興味・関心に応じた教育を選択出来るようにする」ための「特色ある学校づくり」であり、「学校選択の自由を保証」するための学区制の見直し、などがあげられる。

参考文献

磯崎三郎「総論 京都の高校教育のあり方を考える -その現状と課題-」『季刊ひろば 京都の教育』京都教育センター+「季刊ひろば」刊行委員会 2010
京都府教育委員会『昭和60年度からの京都府公立高校の新しい教育制度』1984
京都府教育委員会ら『公立高校普通科の選択肢が広がります。』2007 http://www.kyoto-be.ne.jp/kaikaku/koukoukaikaku/kyotootokuni/kaizen.pdf (2018年6月1日最終アクセス)
市川哲、赤城英明、室井修、淀川雅也「京都府における高校教育制度改善の動向」『教育行財政研究 12』pp.42-67,関西教育行政学会,1985
小森健吉『高校制度改革の総合的研究』多賀出版,1986
淀川雅也「教育制度改革と京都の『三原則』」『教育実践 第45号』pp.108-118 民衆社,1985
国民教育研究所+木下春雄『高校入試制度の改革』うち第四章と第五章 pp.134-183 ,労働旬報社,1988
増田潔「京都府における新しい高等学校教育制度」『月刊高校教育 18』学事出版,1985